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Heavens come true

 おんなは泣いていた。スタンドだけ点けた薄暗い部屋で、膝を抱えて泣いていた。

 その日、おんなはおとことはじめて喧嘩をした。原因は大したことではなかった。それがいつの間にか揚げ足取りになって、泥試合へと発展した。それは、おんなにとっては一世一代とも言えるかなりの喧嘩だった。

 本当は、今夜は回転寿司のはずだった。たらふく食べるつもりだった。

 おとこといっしょに。

 おんなは、なぜ泣けるのかが分からなかった。でも、なまあたたかいなみだは、あとからあとから溢れて止まらないのだった。

 ばかみたい、と唱えても、あほらしい、とこぼしても、だめなのだった。

 嗚咽を殺して、おんなは洟をすすってぐずぐず泣いた。

 ベランダのガラス戸ががらっと開く。

 その唐突さより、ここは二階なんだけどということより、おとこが当然のように登場したことにおんなは息を止めた。

 今日は星が綺麗だよ、ととりとめもなく、おとこはのたまう。おんなはことばを失う。

 手を出して、とおとこは告げる。

 なみだでべとべとになっている手を、おんなはおずおず差し出す。

 ばらばらと、星がこぼれた。あわい、あお、しろ、ピンク。

 甘いもの食うと、ちょっと落ち着くから、とおとこは言った。

 金平糖だった。

この物語はフィクションです。

以前、ときどき、ふと頭に浮かんだイメージを書きとめていたことがありました。そのなかのひとつが、これ。御伽噺っぽいイメージを含んでいます。自分では気に入っているもののひとつ。

文体は某有名人気女流作家の影響をモロに受けていますわな。ハハハ。

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