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本メモ:paint it black

「カラマーゾフの兄弟」、とりあえず本編(+エピローグ)読み終えました。あと訳者の書いたドストエフスキーの生涯と解題が残ってますが、そちらはちらっとしか読んでません。

全体的な感想としては、とにかく長かった。特に「大審問官」のところがもうキシャーとなるほどキツかったです。興味深いとか面白いとかは部分的にしか感じられませんでした。結末も「えっ、あれだけいろいろやってこれが結末??」って思ってしまった。多分、これは精読してはじめて面白みが出る作品じゃないかと思います。しかし、これだけの大作、読み込まなければ面白くないとは、拷問か。

というか、ただ単にこれを楽しめるには、あたしの頭が足りないんだと思うだよ…。ストーリーにある程度の流れというか勢いのある部分は比較的面白く読みましたが、登場人物が長々と自分の思想を語るところで停滞することが多かったので……

まず頂かなかったら、一生触れないで過ごした作品だと思います。

とりあえず、印象だけ整理(あくまであたしの現在(初読時)の印象です)。ネタバレ注意。

●「主人公」アリョーシャの存在感

:序文で「わたしの主人公」と明言されているカラマーゾフ家の三男・アリョーシャ。しかし、全編に渡って動き回っているにも関わらず、様々な人に影響を与えているにも関わらず、なんとなく印象がぼんやりしているのは何故なのか。下手すると単なるいい人(でも若者らしく発展途上)で終わってしまいそうな…。あたしが他の登場人物のアクの強さに騙されているだけなのか。アリョーシャは他の人物の繋ぎであり、あまり主体的に行動しているように感じられない。或いはそうやって頼まれて、言われて動き回っているからこそ、ドラマは悲劇の方向に向かっていくのか?

書かれなかった「第二の小説」では、彼が「修道僧」から転じて「革命家」となり「第二の父殺し(=皇帝暗殺)」の鍵を握るという作者の構想が残っているそうだが…。そんな彼に対してゾシマ長老はなぜ「俗界へ出ること」を勧めたのだろうか? 

●長男ミーチャのその後

:兄弟の中で、良くも悪くも一番「世間一般にいそうな」、それゆえに一番親しみがもてたのが、気性が激しく、女性とお金にだらしない長男ミーチャである。乱暴に言えば「単細胞」。彼の粗野さは純粋さと紙一重で、だからこそ憎みきれない。「カラマーゾフ」では何か裏がありそうな、一筋縄ではいかなそうな、現時点では大丈夫でも次の瞬間どうなるかわからなそうな人物ばかり出てくるので、ミーチャの存在は(あたしの中で)ある種の清涼剤になっている。「父殺し」の罪名を着せられていても、である。危険ではあっても、次にしようとすることがある程度分かっているから、他の人物よりよっぽど気を許してしまいそうな感じ。彼が何故女性にモテるのか、分かる気がする。

さて、彼に関してはシベリアに流刑になる直前、そして逃亡しようと画策しているところで物語は終わっているが、もし「第二の小説」があったなら、彼のその後は、恋人グルーシェニカとの関係はどうなるのか、それがまず気になるところである。

●イワンの狂気とスメルジャコフの不気味な影

:この二人に関してはとにかく不気味で、それが読後感の「すっきりしなさ」の一翼を担っていることは確かだ。話の最後でイワンは発狂し、死に瀕しているのだが、果たしてそれで終わりなのか?と思えてしまう。イワンが「幻覚=悪魔」と対話する場面は恐怖そのものである。その印象があまりにも強く、またストーリーの中での位置としてもぴりぴり神経に触れる。

イワンの発病には、父殺しの「実行犯」でそれを公にはせずに自殺したスメルジャコフが関係している。イワンに関してだけでなく、物語全体にこのスメルジャコフの影がまとわりついている感じが拭えないのが、なんとも不気味。スメルジャコフの「父」ははっきりと明かされていない、本当は誰なのか(フョードルと噂されているが?)。またスメルジャコフはイワンの無意識の父殺し願望の単なる「実行者」で終わってよいのか? なぜスメルジャコフはイワンにだけ告白をして自殺してしまったのか? この男に関して様々な謎が残されるのは、面白いが、とても怖い。

●少年少女

印象的だったのは、コーリャ・クラソートキンとリーザ・ホフラコーワの、共に14歳の少年少女の描かれ方。なんというか、正に思春期、って感じで、読んでいて非常に恥ずかしかった。他の子どもたち(例えば結核で死んでしまうイリューシャや、コーリャについて歩くスムーソフ)はまだ子どもらしさが見えるだけに微笑ましい。だが、コーリャの社会主義者ぶってしまえる知的さとか、「万能感」まるだしの尊大な態度とか、でもアリョーシャ(尊敬したいひと)の前での自意識過剰。そして、リーザの年上の想い人(アリョーシャ)をやたらからかおうとするところとか、と思ったら一転して「自分なんて…」って卑屈になるところとか、口数の多いぴよぴよしたところとか……THE 思春期!! 子どもから大人への過渡期!! がもーお、あたしには恥ずかしくて仕方ない。これって自分のその頃を見せ付けられてるみたいですよ。

この二人に限らず、脇役は主要人物に負けずと劣らぬ個性が際立ったひとばかりで、ドストエフスキーの人間観察力は優れていたんだろうなぁ、そしてそれを文章で表す描写力もあるんだなぁと思いました。

とりあえずこんなところで……。果たしてまた読み返すのか分かりませんが。

読んだ方いたらご自身のご意見ご感想聞いてみたいです。

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