0200 a.m.(ver.2=2600 p.m.)

それはあたしにとって、一番素敵な時間だ。風呂に入ってまっさらになった肌を、潤して、石けんのいい匂いさせて、多分最もすました顔で鏡の前にいる。多分、夜の深淵にあって、あたしは一日のうちで一番きれいでやさしい顔をしている。化粧はしてないけれども。

夜の闇の中で、音楽はよく透き通ってあたしの耳に届く。気まぐれで煙草をふかしたりもする。あとは眠るだけ。

眠りたくないって思うことはあっても、眠れないことはない。いつでも健やかにあたしは眠れる。いい夢は滅多に見ないけれど、それでも眠りは甘美で寛大。

(最近よく眠れないんだ)

そう言うのを聞いた。みんなよく、そう言う。不眠症は、よくある、けれど結構しんどい話。あたしには実感がない。

街は起きている。そして、あの人も。あの人も。あの人も。けれども、あたしは。ということに、遠くの正面でドロップのように光る灯りを見て、自覚する。

すこし、さみしい。

携帯電話を取る。電話する? メールする? あたしの眠りを分けてあげたい。それ以外のものも。分けてあげたい。水分を、花を、目に映るものを。

あたしはシーツの中に滑り込み、携帯電話を置く。無造作に置く。

闇はしとやかに瞼の上に落ちてくる。何もしなくても、眠れる。

けれど、すこしのさみしさがどうやって溶けていくのか、やはり分からないでいる。携帯電話のバックライトが音もなく消える。

これは今書いてみた。今も昔も大して変わってないことが分かる。

0200 a.m.(ver.1)

あたしにとってその時間は、映画が見終わった、とか、レポートが書き終わった、とか、ネイルがようやく乾いた、とかそういう時間で、夜の深淵の中にあってあたしの目は冴えている。だからといって、後は寝るより他何もすることはない。むしろ、事の最中には眠くて仕方なかったのだが。これって、どういうわけなんだろう。

大抵は、ベランダに出て煙草を一本ふかして、仕方なく床に就く。

それでも、起きていることを諦めきれないとき。それは夜のひとりぼっちを自覚したときだ。

街は起きている。けれども、あたしはひとり。ということに、遠くの正面でドロップのように光る明かりを見て、自覚する。

このうえなくさみしい。

あたしは、メールを送る。みんな眠っていることを知っているのに。

そして、来るはずのない返信を待ちながら、僅かの可能性を期待して、もう目が慣れてしまった暗闇の中で寝返りを打つ。

そうして、いつの間にか、眠れる。

文章発掘シリーズ。日記程度。

Black Strings

 髪を切るのは、何か新しいことをはじめたいからだ。新しい自分と、新しい環境と、新しい気持ちを迎えるための準備。それは、裏を返せば古い何かにサヨナラをするということ。だから、失恋をしたから髪を切るというのは、道理に適っている。

 ともだちに言われた。

 随分みじかくしたね。どうしたの? 失恋?

 あたしはそれを笑い飛ばしてやる。

 違うよー。

 図星を突かれたのだから、誤魔化すほかない。必死に誤魔化す以外にどうしようがあるだろう、人知れず死に絶えたこの恋を

 男は暗殺者の如く、引き金を引いた。サイレンサーのかかった銃で撃たれた恋は、音もなくぺしゃんこになった。それが男なりの思いやりだと分かったから、叫ぶこともしなかった。

 けれどそれはやはり負けであることに変わりはない。

  

 そんなことばかり繰り返している。そんな恋ばかり、繰り返している。

 さてと、とあたしは腰を上げる。

 別れを言わなくては。このあたしを埋葬しに行かなければ。

 さようなら。

 そう言って美容院へと向かう。

ワード整理にて発見された過去の遺物。半分フィクションです。

そろそろ髪を切りに行こうかなーと思ってます。就活してると思うようにいじれないのがちょっと寂しい。

Heavens come true

 おんなは泣いていた。スタンドだけ点けた薄暗い部屋で、膝を抱えて泣いていた。

 その日、おんなはおとことはじめて喧嘩をした。原因は大したことではなかった。それがいつの間にか揚げ足取りになって、泥試合へと発展した。それは、おんなにとっては一世一代とも言えるかなりの喧嘩だった。

 本当は、今夜は回転寿司のはずだった。たらふく食べるつもりだった。

 おとこといっしょに。

 おんなは、なぜ泣けるのかが分からなかった。でも、なまあたたかいなみだは、あとからあとから溢れて止まらないのだった。

 ばかみたい、と唱えても、あほらしい、とこぼしても、だめなのだった。

 嗚咽を殺して、おんなは洟をすすってぐずぐず泣いた。

 ベランダのガラス戸ががらっと開く。

 その唐突さより、ここは二階なんだけどということより、おとこが当然のように登場したことにおんなは息を止めた。

 今日は星が綺麗だよ、ととりとめもなく、おとこはのたまう。おんなはことばを失う。

 手を出して、とおとこは告げる。

 なみだでべとべとになっている手を、おんなはおずおず差し出す。

 ばらばらと、星がこぼれた。あわい、あお、しろ、ピンク。

 甘いもの食うと、ちょっと落ち着くから、とおとこは言った。

 金平糖だった。

この物語はフィクションです。

以前、ときどき、ふと頭に浮かんだイメージを書きとめていたことがありました。そのなかのひとつが、これ。御伽噺っぽいイメージを含んでいます。自分では気に入っているもののひとつ。

文体は某有名人気女流作家の影響をモロに受けていますわな。ハハハ。